NEW
2024年06月07日

OPECプラスが減産縮小を決定~今後の原油相場への影響は?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

■要旨
 
  1. OPECプラスは、今月2日に会合を開き、減産の一部縮小を決定した。現在行っている減産のうち、日量366万バレル分について来年末まで延長する一方、自主減産の日量220万バレル分について、今年10月から来年9月にかけて減産規模を段階的に縮小する。
     
  2. 事前の予想では、日量220万バレルの自主減産は期限延長されるとの見立てがコンセンサスとなっており、今年年末まで延長されるとの予想も見受けられた。従って、延長が9月末までに留まったのみならず、このタイミングで収束まで見据えた減産縮小が決定されたことはサプライズであった。おそらく、減産が長引くにつれて参加国の間で減産縮小を望む声が強まり、サウジが結束の演出等を重視して譲歩したものと推測される。
     
  3. 減産縮小が決定されたことは原油価格にとって抑制材料に位置付けられる。秋以降、段階的な減産縮小が行われることは原油需給を緩和させるうえ、先々の段階的な減産縮小が見えていることで、投資家が原油を積極的に買い進めづらくなる面もある。
     
  4. ただし、今後も原油価格の大幅な下落は期待しづらいだろう。まず、当面、9月末にかけては減産が維持される一方、米国で原油の需要期にあたるドライブシーズンが続くことで世界的な需給がタイト化しやすい。その後、年終盤には米国の段階的な利下げ開始が視野に入ってくることで、景気回復期待とドル安が価格の支えになると考えられる。また、今後も中東における地政学リスクの早期鎮静化が見込みづらいことや、OPECプラスによる減産縮小が、声明文に明記されているように、今後延期や一時停止、撤回となる可能性がある点も原油価格の支えになる。今年年末までの展開としては、1バレル60ドル台後半から80ドル台前半(WTI先物・期近物ベース)をレンジとする推移が想定され、年末に70ドル台半ばで着地すると予想している。

 
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1.トピック: OPECプラスが減産縮小を決定
  ・サプライズだった減産の縮小決定
  ・原油価格への影響は?
  ・ただし、大幅な原油安は期待薄
  ・原油相場の年内見通し
2.日銀金融政策(5月)
  ・(日銀)現状維持(開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(5月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2024年06月07日「Weekly エコノミスト・レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【OPECプラスが減産縮小を決定~今後の原油相場への影響は?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

OPECプラスが減産縮小を決定~今後の原油相場への影響は?のレポート Topへ